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解説 · 約9分

洗浄・脱脂で局所排気装置を置けないとき|第二種有機溶剤の対策4つ

監修:大滝良彦(VOC空気清浄機事業部 セールスエンジニア) 公開  条文はe-Govの有機溶剤中毒予防規則で2026年10月10日に確認

屋内で第二種有機溶剤(IPA、アセトン、MEKなど)を使う洗浄・脱脂作業は、有機溶剤中毒予防規則(有機則)第5条により、密閉設備・局所排気装置・プッシュプル型換気装置のいずれかが原則です。置き場所がないという理由だけでは免除されません。現実の選択肢は、発散源を密閉する、プッシュプル型にする、条文の例外に当たるか確かめる、発散防止抑制措置の特例(第13条の2・13条の3)を使う、の4つです。

当社は2021年から有機溶剤用の局所脱臭装置を販売し、累計160台以上を納入しています。発散防止抑制措置の特例実施許可(大阪労働局天満署 令和4年度第1号)は、同じ事務所の株式会社ベリカが取得しています。許可は現場ごとに必要で、お客様の現場に引き継がれるものではありません。

局所排気装置は置きたい。けれど洗浄槽の横には、先客の台車と、誰のものか分からない脚立が長年居座っている。この記事は、そういう現場のための整理です。この記事は局所排気装置とは(仕組み・種類・点検・届出)の関連トピックで、局所排気装置が置けない現場の全体像は局所排気装置が設置できない現場の有機溶剤対策にまとめています。

局所排気装置の構成図。囲い式フードと外付け式フード、主ダクトと枝ダクト、空気清浄装置、ファン、屋外の排気ダクトと排気口までが1式であることを示している
局所排気装置は、フード、ダクト、ファン、屋外の排気口までが1式です。「置けない」の理由の多くは、この1式の大きさです。
目次
  1. 4つの選択肢の早見表
  2. 有機則第5条の原則と、免除にならないもの
  3. 条文の例外を、洗浄・脱脂に当てはめる
  4. 選択肢①②:密閉化とプッシュプル
  5. 選択肢④:発散防止抑制措置の特例
  6. 現場で測った結果
  7. 確認の手順(7ステップ)
  8. よくある質問

4つの選択肢の早見表

「置けない」の中身は、現場によって違います。スペースがない、屋外に排気口を出せない、作業場所が移動する。どれに当たるかで、合う選択肢が変わります。

選択肢法令上の位置づけ向く現場向かない現場
① 発散源を密閉する有機則第5条の設備の1つ(密閉設備)洗浄を機械の中で完結できる。部品が機械に入る大きさ手作業の洗浄、大きな対象物、ふたを付けただけの槽(開閉のたびに蒸気が出る)
② プッシュプル型換気装置有機則第5条の設備の1つ作業範囲が広い。送風側と吸込み側の置き場所と、屋外への排気が取れる置き場所がない現場、屋外に排気口を出せない現場
③ 少量・短時間などの例外有機則第2条・第3条、第7条〜第12条消費量が許容量以下、作業が臨時または短時間など、条文の条件に当たる作業毎日続く通常の洗浄・脱脂(多くは条件に当たらない)
④ 発散防止抑制措置の特例有機則第13条の2・第13条の3。濃度測定で第一管理区分になれば、労働基準監督署長の許可を得て設備を省略できるダクトも屋外排気口も作れない。作業場所が移動する。装置を置く場所は小さくて済む発散量が非常に多い作業、特化則の対象物質、測定しても第一管理区分にならない現場

根拠:有機溶剤中毒予防規則(e-Gov法令検索)。向く・向かないの欄は、当社の整理です。個別の判断は管轄の労働基準監督署にご確認ください。

有機則第5条の原則と、免除にならないもの

有機則第5条は、屋内作業場等で第一種または第二種の有機溶剤業務を行うとき、蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置のいずれかを設けることを求めています。第二種にはIPA(イソプロピルアルコール)、アセトン、MEK、トルエン、キシレンなどが入ります。どの区分に当たるかは有機溶剤の第一種・第二種・第三種の分類で確認できます。

換気扇を1台付ければ解決、と言いたいところですが、条文はそこまで甘くありません。次の3つは、それだけでは第5条の設備の代わりになりません。

  1. 全体換気装置だけ:第9条(短時間)、第10条(壁・床・天井)、第11条(隔離された作業場)など、条件が決まった例外でだけ認められます。
  2. 防毒マスクなどの保護具だけ:保護具は設備の代わりではなく、設備とあわせて使うものです。
  3. 槽にふたを付けただけ:ふたを閉めている間は蒸気が減りますが、開け閉めと乾燥の工程では蒸気が出ます。実際に発散を防げる構造かどうかが問われます。

条文の例外を、洗浄・脱脂に当てはめる

有機則には、設備を省略できる例外がいくつかあります。数が多いので、洗浄・脱脂の現場で当たる可能性があるかどうかを並べました。

条文内容の名前条件のあらまし洗浄・脱脂での目安
第2条・第3条少量使用1時間あたりの消費量が許容消費量以下なら、この規則の多くの規定が適用されません(第3条は、常態として許容量を超えない場合に認定を受けることが条件)。小規模なら当たる可能性があります。消費量の数え方に決まりがあります
第7条周壁が開放されている周壁の2側面以上が外気に開放され、周壁面積の半分以上が開放されていて、通風を妨げる壁やつい立がない屋内作業場。屋外に近い開放的な作業場だけです
第8条臨時の業務臨時に行う有機溶剤業務。日常の洗浄は当たりません
第9条短時間の業務作業時間が短時間で、全体換気装置を設けた場合。短時間と認められる場合だけです
第10条壁・床・天井の作業建物の壁、床、天井に対する業務で、発散面が広く設備の設置が困難な場合に、全体換気装置を設けたとき。部品の洗浄は通常当たりません
第11条隔離された作業場反応槽など業務用設備が常置され、他の作業場から隔離され、労働者が常時立ち入る必要がない作業場で、全体換気装置を設けたとき。隔離された専用の洗浄室などです
第12条代替設備開放槽の液面を水などで覆う、または槽の開口部に逆流凝縮機などを設けたとき。洗浄槽では、この方法が当たる場合があります
第13条署長の許可発散面が広いために設備の設置が困難な場合に、労働基準監督署長の許可を受けて設備を省略できる。条件は「発散面が広いこと」です。置き場所がないだけでは足りない場合があります

根拠:有機溶剤中毒予防規則(e-Gov法令検索)第2条、第3条、第7条〜第13条。「目安」の欄は当社の整理で、法令の判断ではありません。

少量使用(第2条)の計算

許容消費量は、作業場の気積をA(上限150㎥)として、第二種は W=2/5×A(g、1時間あたり)です。第一種は1/15×A、第三種は3/2×Aです。たとえば気積100㎥の作業場なら、第二種は1時間に40gが基準になります。業務の種類によっては消費量に厚生労働大臣が定める数値を掛けて数えるなど、算定の決まりがあります。計算の前に、条文と管轄の労働基準監督署に確認してください。

選択肢①②:密閉化とプッシュプル

① 発散源を密閉する

洗浄から乾燥までを機械の中で完結させる密閉式の洗浄機は、第5条の設備として最も筋が通っています。部品が機械に入る大きさで、同じ工程が繰り返される現場に向きます。手拭きの洗浄や大きな対象物、槽を変えられない現場には向きません。

② プッシュプル型換気装置

送風側と吸込み側の両方に設備が要るため、必要なスペースは局所排気装置より大きくなります。置き場所がない現場の解決策にはなりにくい選択肢です。仕組みと性能基準(平均風速0.2m/s以上)はプッシュプル型換気装置とはで解説しています。

選択肢④:発散防止抑制措置の特例

ダクトも屋外排気口も作れない現場の、4つ目の選択肢です。局所排気装置を置く代わりに、発散源の近くで蒸気を吸って処理する措置を実施し、濃度測定で効果を確かめる制度です。

  1. 措置を実施する:確認者を選任し、蒸気が作業場に拡散しないことと、危険や健康障害のおそれがないことを事前に確認させます(第13条の2第1項第1号)。
  2. 保護具を使う:作業者に、送気マスク、有機ガス用防毒マスク、または有機ガス用の電動ファン付き呼吸用保護具を使わせます(同第2号)。許可を得るための濃度測定をしている間は、これを条件に第5条の設備なしで作業できます。
  3. 濃度を測る:その作業場の濃度測定の結果を評価し、第一管理区分になることが許可の条件です(第13条の3第1項)。
  4. 許可を受ける:発散防止抑制措置特例実施許可申請書(様式第五号)に、見取図、測定・評価の結果、事前確認の結果、措置の内容と有効である理由などを添えて、所轄の労働基準監督署長に申請します(同第2項)。
  5. 維持する:許可のあとに第一管理区分でなくなる、またはそのおそれがあるときは、署長への文書報告、設備や作業の改善、保護具の使用が必要です。報告を怠ると許可は取り消されます(同第5項〜第7項)。
装置内部の空気の流れ。吸引口から活性炭フィルター、HEPAフィルターを通ってクリーンな空気が排気される流れの図
当社の装置は、ダクトも屋外排気口も持たず、内蔵の活性炭とHEPAフィルターで処理してから排気します。

許可は現場ごとに必要で、装置を買えば自動的に付いてくるものではありません。申請から許可までは、当社の経験で半年から1年ほどかかります。申請書類の作成と環境測定士の紹介は、特例実施許可の申請サポートで行っています。

この選択肢が向かない場合

発散量が非常に多い作業(大きな開放槽で大量に使うなど)は、フィルターの交換が追いつかず、密閉式の洗浄機のほうが合います。当社の装置は防爆仕様ではないため、アセトンやMEKなど引火性の溶剤は、使用条件を事前にご相談ください。特化則の対象物質は、物質と使用条件ごとの個別の検証が必要で、特化則への対応は保証していません。

現場で測った結果

ある塗装作業場では、現地の労働基準監督署の立会い測定で、発生源5cmの位置の捕捉風速0.7m/sを確認し、局所排気装置として認められた事例があります(2024年7月)。

吸着できる量の目安もあります。2025年3月の試験(株式会社ベリカ実施)では、箱の中でIPAを1日600gずつ発生させ、BA500Tの活性炭が破過してセンサーが200ppmを検知するまでに、約4,650gの溶剤を吸着しました。条件が変われば結果も変わるため、仕様値ではなく目安です。洗浄・脱脂で使う溶剤の量と、フィルターの交換周期を考えるときの出発点にしてください。

対策の前後の濃度は、デモ機貸出(1週間、有償、国内の法人限定、1回のみ)で、自社の現場で測れます。

確認の手順(7ステップ)

条文と睨み合う前に、まず溶剤の名前を確認します。意外と多いのが、ラベルが擦り切れて読めない一斗缶です。

  1. 溶剤を特定する:SDSで製品名と含有成分を確認し、第一種・第二種・第三種のどれか、特化則の対象物質を含まないかを見ます。SDSの読み方も参考にしてください。
  2. 作業の実態を記録する:槽の開口寸法、1回の作業時間、1日の使用量、作業人数、洗浄後の乾燥方法、作業場の気積を書き出します。
  3. 少量使用に当たるか計算する:第2条の許容消費量と比べます。
  4. 例外に当たるか照らす:上の表の第7条〜第13条を見ます。
  5. 選択肢を比べる:密閉化、プッシュプル、発散防止抑制措置を、置き場所と費用で比べます。
  6. 労働基準監督署に事前に相談する:見取図、SDS、作業手順、使用量、検討した代替措置を持っていきます。判断は署ごと、担当者ごとに異なります。
  7. 周辺の義務を整える:作業環境測定(6か月以内ごとに1回)、特殊健康診断、有機溶剤作業主任者の選任です。

規則全体の整理は有機溶剤中毒予防規則(有機則)の解説、設置届が必要な場合は局所排気装置の届出をご覧ください。

よくある質問

局所排気装置を設置できないとき、換気扇(全体換気)だけで済みますか?

通常は済みません。有機則第5条は、屋内で第一種・第二種の有機溶剤を使う業務に、密閉設備・局所排気装置・プッシュプル型換気装置のいずれかを求めています。全体換気装置で足りるのは、第9条(短時間)、第10条(壁・床・天井)、第11条(隔離された作業場)など、条件が決まっている場合だけです。

防毒マスクを着けていれば、設備は不要ですか?

保護具の着用だけで、第5条の設備を設ける義務が免除されることはありません。発散防止抑制措置の特例でも、保護具(第13条の2)に加えて、確認者の選任、濃度測定、労働基準監督署長の許可が必要です。

設置スペースがないことを理由に、第13条の許可は受けられますか?

第13条の許可の条件は、発散面が広いために設備の設置が困難なことです。置き場所がないという理由だけでは、この条件に当たるとは限りません。洗浄・脱脂では、密閉化、プッシュプル、発散防止抑制措置を先に検討し、管轄の労働基準監督署に事前に相談してください。

発散防止抑制措置の特例は、どんな流れで進みますか?

大きく3段階です。①確認者を選任し、蒸気が作業場に拡散しないことと危険や健康障害のおそれがないことを事前に確認する。②作業者に送気マスク、有機ガス用防毒マスク、または有機ガス用の電動ファン付き呼吸用保護具を使わせ、濃度測定を行う。③測定結果の評価が第一管理区分になったら、申請書(様式第五号)に見取図や測定結果などを添えて、労働基準監督署長の許可を受ける。許可は現場ごとに必要で、当社の経験では申請から許可まで半年から1年ほどかかります。

許可を受けたあとに、第一管理区分でなくなったらどうなりますか?

直ちに評価結果を文書で署長に報告し、第一管理区分になるよう設備や作業を点検・改善し、作業者に有効な呼吸用保護具を使わせます。報告を怠った場合や、改善されない場合は、署長は許可を取り消します(第13条の3第5項〜第7項)。

洗浄・脱脂に、ベリクリーンエアの装置は使えますか?

溶剤と作業内容によります。有機則の対象溶剤(IPA、アセトン、MEKなど)は、ほとんどの場合に対策できます。ただし防爆仕様ではないため、引火性の溶剤は使用条件を事前にご相談ください。特化則の対象物質は、物質と使用条件ごとの個別の検証が必要で、一律にはお答えできません。デモ機を1週間お貸しして、自社の現場で効果を測れます。

洗浄・脱脂の溶剤と作業内容をお知らせください。局所排気装置を置けない現場に合う機種を、BA500Tをはじめとするラインナップからご案内します。まずはデモ機で、自社の現場の濃度を測ってみませんか。電話は06-6352-7754(平日9:00〜17:00)、メールはy.otaki@belica.co.jpです。

監修:大滝良彦

VOC空気清浄機事業部 セールスエンジニア。有機溶剤・VOC対策の技術担当として、装置の選定から労働基準監督署への対応まで、現場ごとの相談に応じています。条文は有機溶剤中毒予防規則の原文で確認しています。個別の判断は、管轄の労働基準監督署にご確認ください。

お問い合わせ:y.otaki@belica.co.jp

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