ブログ / 局所排気装置
解説 · 約9分局所排気装置とは(仕組み・種類・点検・届出)
監修:大滝良彦(VOC空気清浄機事業部 セールスエンジニア) 公開

局所排気装置とは、有機溶剤の蒸気や粉じんなどの有害物質を、作業場全体に広がる前に発生源のすぐそばで吸い込み、ダクトを通して屋外へ排出する設備です。有機則や特化則の対象作業では設置が義務づけられており、フードの形で囲い式・外付け式・プッシュプル型の3種類に分かれます。設置後は年1回の定期自主検査が必要です。
当社(ベリクリーンエア)は、局所排気装置の代わりに置ける「発散防止抑制措置」の装置を2021年から販売し、累計160台以上を納入してきました。2023年には大阪労働局天満署の特例実施許可を取得しています。2024年7月には、福井県の塗装作業場で当社のBA400Tが敦賀労働基準監督署に局所排気装置として認められた実績もあります。
局所排気装置の3つの種類
局所排気装置は、フード(吸い込み口)の形で次の3種類に分かれます。作業内容と発生源の位置に合わせて選びます。
| 種類 | 仕組み | 向いている作業 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 囲い式(ブース式) | 発生源の三方をフードで囲い、内部の吸引口で排気する | 作業位置が固定された工程、外に漏らしたくない作業 | 開口部を開けすぎると外へ漏れる |
| 外付け式 | 可動アームの吸引口を発生源に近づけて吸う | 作業者が動く工程、手作業の多い工程 | 吸引口がずれると捕集効率が大きく落ちる |
| プッシュプル型 | 吹き出しと吸引で気流をつくり、有害物質を吸引口へ導く | 広い範囲をまとめて換気したい作業 | 周囲の送風や人の動きで気流が乱れやすい |
局所排気装置とは(役割と法的位置づけ)
局所排気装置とは、作業中に発生する有害物質を作業場全体に拡散させる前に、発生源の近くで集中的に捕集し、屋外へ排出するための設備です。粉じんや有機溶剤の蒸気は、そのままでは空気中に広がって作業者の健康に影響します。発生源にとどめて吸い出すことで、作業環境全体への影響を最小限に抑えます。
薬品や有害物質を扱う実験室・研究施設・製造現場では、法令によって設置が求められます。安全な作業環境を維持するうえで欠かせない設備です。
囲い式フード
作業空間そのものをフードで囲い込む構造で、ブース型とも呼ばれます。発生源の三方を囲うことで蒸気や粉じんが周囲へ拡散するのを防ぎ、内部の吸引口から効率よく排気します。外部への漏れが起こりにくい一方、作業スペースは限られます。実験室で使うグローブボックス型やドラフトチャンバー型もこの仲間です。

外付け式フード
可動式アームの吸引口を、発生源に直接近づけて使うタイプです。作業空間を覆わないため自由度が高く、作業者が動く工程にも対応できます。吸引口の向きで側方吸引型・上方吸引型・下方吸引型に分かれ、スロット型・ルーバー型・グリッド型などの形があります。吸引位置がずれると捕集効率が落ちるため、位置調整が重要です。

プッシュプル型換気装置
吹き出し(プッシュ)と吸引(プル)を組み合わせ、意図的に気流をつくって有害物質を吸引口へ導く方式です。密閉式(送風機あり)、密閉式(送風機なし)、開放式に分かれます。囲い式や外付け式より必要な制御風速が低く排気量を抑えられますが、周囲の送風や人の動きの影響を受けやすい点に注意します。

発散防止抑制装置との違い
局所排気装置は、フードで吸い込んだ空気をダクト・空気清浄装置・排風機を通して最終的に屋外へ排気します。これに対して発散防止抑制装置は、屋外へ排気するダクト設備を持たず、フィルターなどで有機溶剤を吸着して濃度を下げる装置です。
発散防止抑制装置は、局所排気装置が設置できない環境で、一定の要件を満たすことで設置できます。ただし、第2種有機溶剤や特定化学物質第2類物質などを扱う場合は、装置の設置後に「特例実施許可申請」を行う必要があります。
当社の装置は有機則対策向けです。特化則(特定化学物質)に該当する物質には対応していません。局所排気装置が置けない現場での有機溶剤対策については、局所排気装置が設置できない現場の有機溶剤対策で詳しく説明しています。
局所排気装置に関係する規則
局所排気装置の設置や運用は、複数の法令・省令で定められています。主なものは次の4つです。
- 有機溶剤中毒予防規則(有機則):有機溶剤の蒸気による中毒や健康障害を防ぐための規則。第1種〜第3種に分類された44種類が対象で、局所排気装置による排気に加え、作業環境測定・装置の性能維持・定期点検・健康診断が義務づけられます。(e-Gov 有機溶剤中毒予防規則)
- 特定化学物質障害予防規則(特化則):がんや慢性障害など重篤な健康被害を招くおそれのある物質から作業者を守る規則。密閉設備・局所排気装置・プッシュプル型換気装置の設置を義務づけています。違反すると行政指導や、3年以下の懲役または50万円以下の罰金の対象になることがあります。(e-Gov 特定化学物質障害予防規則)
- 鉛中毒予防規則(鉛則):鉛および鉛化合物を扱う作業の規則。フード外側の空気中鉛濃度を1立方メートルあたり0.05mg未満に抑える、法令仕様の密閉式プッシュプル型換気装置を稼働させる、作業者1人あたり1時間100立方メートル以上の換気量を確保する、などが定められています。
- 粉じん障害防止規則(粉じん則):粉じんの吸入による健康障害を防ぐための規則。事業者は健康診断を行い、必要に応じて作業場所の変更・作業内容の転換・作業時間の短縮など、適切な健康管理措置を講じます。(e-Gov 粉じん障害防止規則)
上記は実務上の一般的な整理です。適用の判断は、必ず法令原文と所轄の労働基準監督署でご確認ください。
正しい使い方
どの装置でも、作業を始める前に次の2点を必ず確認します。基本の見落としが現場では意外と多く起こります。
- 電源の確認:スイッチが入っているか(動いているか)を目で見る
- 気流の確認:実際に空気を吸い込んでいるかを確かめる
囲い式
有害物質を吸引するために必要な「制御風速」(フード開口面上の風速)が確保されているかを定期的に確認します。開口部を必要以上に開けたまま使うと、装置の外へ有害物質が漏れ出し、想定以上の曝露につながります。開口部は作業に必要な最小限にとどめます。
外付け式
制御風速は、フード開口面から最も離れた作業位置での風速を指します。フードから離れた位置で作業してしまい、制御風速が足りていないケースが少なくありません。できるだけフードに近い位置で作業し、顔を不用意に近づけないことを徹底します。
プッシュプル型
作業者の立ち位置が重要です。発生源から吸引口までの風下側に立つと汚染空気を直接吸い込むため避けます。吹き出し側を背中や物で塞ぐと気流が乱れて効果が落ちます。扇風機や空調の風が装置の気流に影響する点にも注意します。
設置の注意点
- 物質と作業環境に合った装置か確認する:装置の種類には向き不向きがあります。有機溶剤の種類、発生源の位置、作業内容を踏まえて方式を選びます。
- 地域で定められた排気方法を確認する:自治体によっては、排気の方向や屋外排気の方法が条例で定められている場合があります。導入前に必ず確認します。
- 管轄の労働基準監督署へ届け出る:設置時は工事開始の30日前までに届け出が必要です。設置後は年1回の定期自主検査を行い、記録は3年間保管します。
導入の流れ
作業内容・使用する化学物質・法令要件を踏まえ、段階的に進めます。正しい手順を踏むことで、無駄な追加工事や是正指導のリスクを防げます。

- 専門家へ相談:使う有機溶剤や粉じんの種類、作業方法で必要な装置は大きく変わります。自己判断で選ぶと法令を満たさない装置になりかねません。
- 現地調査・計画立案:発散源の位置、作業者の動線、設置スペース、既存設備との干渉を確認し、フード形状や排気方式、届出準備を検討します。
- 設置・構築:フード・ダクト・ファン・空気清浄装置を配置し、気流や制御風速が基準を満たすか確認して調整します。
- 作業者への教育:電源確認、フード位置、やってはいけない使い方を共有します。顔の位置や開口部の扱いなど日常の注意点が中心です。
- 定期メンテナンス:年1回以上の自主検査で制御風速や異常を確認します。フィルターやファンの劣化を放置すると排気性能が落ち、法令違反につながります。
現場で見てきたこと
当社は、局所排気装置の設置が難しい現場での有機則対策を専門にしています。担当の大滝が現場に入って分かったことを、実例で紹介します(社名は伏せています)。
福井県の塗装作業場(エチルベンゼンの手塗り):以前から労働基準監督署に局所排気装置の設置を求められていた現場です。BA400Tを発生源から約5cmの位置に設置し、排気を屋外へ出す改造を行いました。2024年7月16日、敦賀労働基準監督署の立ち会いで、捕集風速0.7m/s・屋外排気口での測定・フィルター管理計画が認められ、BA400Tが局所排気装置として承認されました。

MEKを使うインクジェット印刷:発生源付近が400〜500ppmという環境で、BA500Tを最大の約60%の風量で運転し、投入口・排気口とも0ppmを維持できた試験結果があります。
納入は累計160台以上。フィルター交換の目安は平均6か月です(24時間稼働の連続ラインで最短3か月、間欠使用で1〜1.5年)。
「同じような形でご採用いただいているお客様がたくさんいます。有機溶剤の対策でお困りごとがあれば、いつでも大滝までお尋ねください。」
大滝良彦(VOC空気清浄機事業部 セールスエンジニア)
これらは有機則対策・作業環境改善の事例です。特化則の管理基準を満たすことを示すものではありません。
よくある質問
局所排気装置の導入にはいくらかかりますか?
ドラフトチャンバーの場合、本体で約200万〜400万円が目安です。ダクト・電気・給排水の工事を含めると、総額で数百万円規模になることが一般的です。
点検は自分でできますか?
日常点検(動作確認や異音の有無)は現場で行えますが、年1回の定期自主検査と性能測定は専門業者に依頼するのが確実です。検査の記録は3年間保管します。
局所排気装置の「届出」とは何ですか?
対象の物質を扱う装置の設置・移設・主要構造の変更を行うとき、工事開始の30日前までに所轄の労働基準監督署へ「機械等設置届」を提出する手続きです。
局所排気装置が設置できない場合はどうすればいいですか?
一定の要件を満たせば、屋外ダクトを持たない「発散防止抑制措置」の装置を局所排気装置の代わりに設置できる場合があります。有機則対策であれば当社の装置が選択肢になります。
有機則と特化則で対応は変わりますか?
特化則の対象物質は有機則より有害性が高く、専用の洗浄設備や30年間の記録保存など、より重い管理が求められます。当社の装置は有機則対策向けで、特化則の対象物質には対応していません。
局所排気装置の設置が難しいときは
費用を抑えたい、ライン変更で動かせる装置がほしい、ダクト工事が難しい ― そんなときは、工事不要で発生源の近くに置ける当社の脱臭・集塵装置をご検討ください。有機則対策と作業環境の改善に、累計160台の実績があります。

VOC空気清浄機事業部 セールスエンジニア。有機溶剤・VOC対策の技術担当として、装置の選定から労働基準監督署への対応まで、現場ごとの相談に応じています。
お問い合わせ:y.otaki@belica.co.jp