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解説 · 約7分

プッシュプル型換気装置とは?局所排気装置との違いと設置基準

監修:大滝良彦(VOC空気清浄機事業部 セールスエンジニア) 公開

プッシュプル型換気装置の気流のイメージ。片側の送風フードから吸込みフードへ、作業者の前を通る一様な気流の断面図
片側から風を送り(プッシュ)、反対側で吸引する(プル)。作業者の前を一様な気流が流れます。

プッシュプル型換気装置とは、片側の送風フードから清浄な空気を送り、反対側の吸込みフードで吸引して、作業者の周りに一様な気流をつくる換気設備です。有機溶剤中毒予防規則などで、局所排気装置に代わる措置として認められています。性能の基準は、捕捉面での平均風速0.2m/s以上です。

この記事は局所排気装置とは(仕組み・種類・点検・届出)の関連トピックです。局所排気装置が発生源の一点を狙う設備なのに対し、プッシュプル型は作業範囲全体に気流を通します。どちらも屋外排気とダクトが必要で、どちらも置けない現場には別の選択肢があります。

目次
  1. プッシュプル型換気装置とは(仕組みと2つの型式)
  2. 局所排気装置との違い
  3. 設置基準と定期自主検査
  4. プッシュプル型が合う現場・合わない現場
  5. 局所排気もプッシュプルも置けないときは
  6. よくある質問

プッシュプル型換気装置とは(仕組みと2つの型式)

作業者の後方や斜め後ろ上方に置いた送風フードから前方へ風を送り(プッシュ)、その前方に置いた吸込みフードで吸引します(プル)。発生源から出た有害物質は、作業者を通り越す前にこの気流に乗って吸込み側へ運ばれます。フードで発生源を囲う局所排気装置と違い、作業空間の一定範囲を面でカバーできるのが特徴です。

型式は2つあります。

  1. 密閉式:作業区域を壁で囲い、外との空気の出入りをなくして、囲いの中全体にプッシュプル気流をつくります。外乱に強く、気流が安定します。
  2. 開放式:囲わず、送風フードと吸込みフードだけで局所的にプッシュプル気流をつくります。大きな対象物や搬入出のある作業に向きますが、横風などの影響を受けやすくなります。

根拠:厚生労働省「プッシュプル型換気装置の性能及び構造上の要件等について(昭和54年基発第645号)

局所排気装置との違い

どちらも有機則が認める対策設備で、屋外排気とダクトが必要な点は同じです。違いは、気流のつくり方とカバーする範囲です。

項目局所排気装置プッシュプル型換気装置
気流吸引(排気)のみ送風(プッシュ)+吸引(プル)
カバーする範囲発生源の一点。フードから離れると急に効かない作業空間の一定範囲を面で
作業者の動きへの強さ外付け式は弱い。位置がずれると効果が落ちる気流の中で作業するため比較的強い
性能の基準制御風速(囲い式0.4、外付け式0.5〜1.0m/sなど)捕捉面の平均風速0.2m/s以上(±50%以内)
屋外排気・ダクト必要必要
定期自主検査1年以内ごとに1回1年以内ごとに1回
向く作業の例溶接、はんだ付け、容器への注入塗装ブース、広い作業台での払拭・接着

フードの種類ごとの制御風速は局所排気装置のフードの種類(囲い式・外付け式・プッシュプル)で解説しています。

設置基準と定期自主検査

有機溶剤・特定化学物質・粉じんのいずれの場合も、捕捉面での平均風速0.2m/s以上で、各点の風速が平均の±50%以内であることが性能基準です。密閉式・開放式それぞれに、フードの向き・位置・給排気風量のバランスなどの構造上の要件があります。

有機則・特化則などの対象業務で使う場合、1年以内ごとに1回の定期自主検査と、月1回程度の日常点検が義務です。送風機・排風機の性能、フィルターの目詰まり、ダクトの摩耗と粉じん堆積、気流の状態を確認し、記録を3年間保存します。点検の考え方は局所排気装置の点検・定期自主検査(1年ごとの義務)と共通です。

プッシュプル型が合う現場・合わない現場

選ぶときの目安です。

  1. 合う:塗装ブース、大きな部品の払拭や接着、作業者が動き回る、発生源が広がっている、外付け式フードでは捕捉風速がばらつく現場。
  2. 合わない:送風機・排風機とダクトを置くスペースがない、屋外に排気口を出せない、天井が低い、囲いも開放式のフードスペースも取れない現場。移動の多いラインには固定設備そのものが向きません。

プッシュプル型は局所排気装置より広い範囲をカバーできますが、送風側と吸引側の両方に設備がいるぶん、必要なスペースはむしろ大きくなります。屋外排気やダクトの制約は局所排気装置と同じです。

局所排気もプッシュプルも置けないときは

有機則が原則とする対策は、局所排気装置かプッシュプル型換気装置です。どちらも「屋外排気とダクトが必要」という前提を共有しているため、賃貸で工事ができない、ラインが動く、屋根や外壁に排気口を出せないといった現場では、両方とも難しくなります。

装置内部の空気の流れ。吸引口から活性炭フィルター、HEPAフィルターを通ってクリーンな空気が排気される流れの図
発散防止抑制装置は、ダクトも屋外排気口も持たず、内蔵フィルターで処理してから排気します。

この場合の3つ目の選択肢が、工事不要の発散防止抑制装置です。ダクトも屋外排気口も持たず、発生源のそばで吸引して活性炭とHEPAフィルターで処理します。所轄の労働基準監督署の特例実施許可を得れば、局所排気装置の代替措置として使えます。当社(ベリクリーンエア)の装置は局所排気装置が設置できない現場の有機溶剤対策で、発散防止抑制措置の特例実施許可(大阪労働局天満署 令和4年度第1号)を取得しています。ある塗装作業場では、現地の労働基準監督署の立会い測定で発生源5cmの捕捉風速0.7m/sを確認し、局所排気装置として認められた事例があります(2024年7月)。当社の装置は有機則対策向けで、特化則の対象物質には対応していません。対策前後の濃度はデモ機貸出で自社の現場で測れます。

よくある質問

プッシュプル型換気装置と局所排気装置、どちらを選ぶべきですか?

発生源が1か所に固定されているなら局所排気装置が確実です。塗装ブースのように作業範囲が広い、発生源が移動する、作業者が動き回るといった現場ではプッシュプル型が向いています。どちらも屋外排気とダクトが必要な点は共通です。

プッシュプル型の性能基準は?

有機溶剤・特定化学物質・粉じんのいずれの場合も、捕捉面での平均風速が0.2m/s以上で、各点の風速がその平均の±50%以内であることが求められます。密閉式・開放式それぞれに構造上の要件があります(昭和54年基発第645号)。

定期自主検査は必要ですか?

有機則・特化則などの対象業務で使う場合は、1年以内ごとに1回の定期自主検査と、月1回程度の日常点検が義務です。送風機・排風機の性能、フィルターの状態、ダクトの摩耗・粉じん堆積、気流の状態を確認し、記録を3年間保存します。

密閉式と開放式の違いは?

密閉式は作業区域を壁で囲い、外との空気の出入りをなくして室内全体にプッシュプル気流をつくります。開放式は囲わず、送風フードと吸込みフードだけで局所的にプッシュプル気流をつくります。囲えるなら密閉式のほうが外乱に強く安定します。

既存の局所排気装置をプッシュプル型に変える必要はありますか?

局所排気装置が有効に機能していれば、変える必要はありません。捕捉風速が出ない、作業範囲が広がった、作業者の動きで効果がばらつくといった問題があるときに、プッシュプル型や別の方式を検討します。

監修:大滝良彦

VOC空気清浄機事業部 セールスエンジニア。有機溶剤・VOC対策の技術担当として、装置の選定から労働基準監督署への対応まで、現場ごとの相談に応じています。

お問い合わせ:y.otaki@belica.co.jp

関連ページ

  1. 局所排気装置とは(仕組み・種類・点検・届出)
  2. 局所排気装置のフードの種類(囲い式・外付け式・プッシュプル)
  3. 局所排気装置の点検・定期自主検査(1年ごとの義務)
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