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解説 · 約8分SDS(安全データシート)の見方|16項目とリスクアセスメントで見る3項目
監修:大滝良彦(VOC空気清浄機事業部 セールスエンジニア) 公開

SDS(安全データシート)は、化学品の危険有害性、取扱い、応急措置などを16項目でまとめた文書です。労働安全衛生法にもとづき、化学品を他の事業者に譲渡・提供する供給者に交付義務があります。使う側は、リスクアセスメントの入力資料として第2項・第8項・第9項を中心に読みます。
この記事は化学物質の自律的管理とリスクアセスメント義務化で必要になる基本文書、SDSの読み方を掘り下げたものです。SDSが読めれば、その溶剤にどの対策がいるか、換気設備が必要かの判断が速くなります。
SDSとは(誰が・いつ渡すか)
SDSは Safety Data Sheet の略で、以前はMSDSと呼ばれていた文書です。化学品を製造・輸入して他の事業者に譲渡・提供する供給者に、SDSの交付義務があります。使う側は、購入時や仕様変更時にSDSを入手し、社内で共有し、作業場に備え付けます。
交付義務の対象物質(通知対象物)は段階的に増えています。2024年4月の改正で674物質から896物質になり、2025年4月・2026年4月とさらに拡大が予定されています。自分の使う物質がSDSの対象かどうかは、供給者に確認するか、厚生労働省の一覧で調べます。記載方法はJIS Z 7253に準拠するのが標準で、これに沿えば化管法や毒劇法の求めにも対応できます。
根拠:労働安全衛生法 第57条の2、経済産業省「SDS 標準的な書式(JIS Z 7253対応版)」
16項目の構成
SDSの項目は16に決まっています。全部を毎回読む必要はありませんが、どこに何が書いてあるかを知っておくと、必要な情報にすぐ届きます。
| 項 | タイトル | 主に書いてあること |
|---|---|---|
| 1 | 化学品及び会社情報 | 製品名、供給者の連絡先、緊急連絡先 |
| 2 | 危険有害性の要約 | GHS分類、絵表示、注意喚起語、危険有害性情報。まずここを読む |
| 3 | 組成及び成分情報 | 成分名、CAS番号、含有率。混合物なら各成分の割合 |
| 4 | 応急措置 | 吸入・皮膚・眼・飲み込み時の処置 |
| 5 | 火災時の措置 | 適切な消火剤、避けるべき消火剤、特有の危険性 |
| 6 | 漏出時の措置 | 人体の保護、環境への配慮、封じ込めと除去 |
| 7 | 取扱い及び保管上の注意 | 安全な取扱い、保管条件、混触危険物質 |
| 8 | ばく露防止及び保護措置 | 管理濃度・濃度基準値・許容濃度、設備対策、保護具。対策を決めるときに読む |
| 9 | 物理的及び化学的性質 | 沸点、蒸気圧、引火点など。揮発しやすさが分かる |
| 10 | 安定性及び反応性 | 反応危険性、避けるべき条件、危険有害な分解生成物 |
| 11 | 有害性情報 | 急性毒性、皮膚・眼への影響、発がん性、生殖毒性などの試験データ |
| 12 | 環境影響情報 | 生態毒性、残留性、生物蓄積性 |
| 13 | 廃棄上の注意 | 残余廃棄物・汚染容器の処理方法 |
| 14 | 輸送上の注意 | 国連番号、品名、輸送時の区分と表示 |
| 15 | 適用法令 | 労働安全衛生法、化管法、消防法などの該当区分 |
| 16 | その他の情報 | 改訂日、参考文献、記載内容の位置づけ |
リスクアセスメントで実際に見る3項目
対策を決めるためのリスクアセスメントでは、次の3項目を中心に読みます。ここが埋まっていれば、CREATE-SIMPLEなどの見積りツールにそのまま入力できます。
- 第2項 危険有害性の要約:GHS分類で、その物質が「区分1の発がん性」「特定標的臓器毒性」などに該当するかが分かります。有害性の重さが対策の必要度を決めます。
- 第8項 ばく露防止及び保護措置:管理濃度・濃度基準値・許容濃度と、推奨される設備対策、保護具が書かれています。見積ったばく露をこの値と比べて、対策の要否を判断します。
- 第9項 物理的及び化学的性質:沸点、蒸気圧、引火点。蒸気圧が高いほど揮発しやすく、同じ取扱量でも空気中の濃度が上がりやすくなります。工程での発散量を見積る手がかりです。
第3項の含有率も合わせて確認します。混合溶剤では、有害性の高い成分が少量でも入っていると、その成分でリスクが決まることがあります。進め方は化学物質のリスクアセスメントのやり方(有機溶剤の場合)で解説しています。
2024年からの変更点
自律的管理への移行にともない、SDSの制度もいくつか変わりました。手元のSDSが最新の要件を満たしているか、確認しておくと安心です。
- 交付対象の拡大:2024年4月に896物質へ。2025年4月、2026年4月とさらに増えます。
- 記載項目の追加:「想定される用途及び当該用途における使用上の注意」が加わりました。供給者が想定していない使い方をする場合は、供給者に相談します。
- 定期的な見直し:「人体に及ぼす作用」を5年以内ごとに1回確認し、変更があれば1年以内に更新します。
- 通知手段:文書の交付に加えて、電子メールや自社サイトでの提供も認められています。
SDSを読んで対策が必要になったら
第8項のばく露限界に対して、見積ったばく露が高い、または近い。第9項の蒸気圧が高く、作業でどんどん揮発する。こうした場合は、まず工学的対策から検討します。対策の順位は、代替 → 発生源の密閉化 → 工学的対策(局所排気装置・プッシュプル型換気装置)→ 作業管理 → 保護具です。

工学的対策として局所排気装置が必要になったものの、置くスペースがない、建物が賃貸でダクト工事ができない場合は、工事不要の発散防止抑制装置が選択肢です。当社(ベリクリーンエア)の装置は局所排気装置が設置できない現場の有機溶剤対策で、発散防止抑制措置の特例実施許可(大阪労働局天満署 令和4年度第1号)を取得しています。あるインクジェット印刷ドックのMEK対策では、稼働中に付近の濃度が400〜500ppmあったところ、装置の設置後に排気口・ドックともに0ppmで安定した測定例があります(2024年7月)。当社の装置は有機則対策向けで、特化則の対象物質には対応していません。対策前後の濃度はデモ機貸出で自社の現場で測れます。
よくある質問
SDSとMSDSは違うものですか?
同じものです。国際的な呼び方の統一により、MSDS(化学物質等安全データシート)から現在はSDS(安全データシート)に呼称が変わりました。内容や役割は変わりません。
SDSは誰が用意しますか?
化学品を製造・輸入して他の事業者に譲渡・提供する側(供給者)に交付義務があります。使う側は、購入時や仕様変更時にSDSを入手し、社内で共有します。SDSがない、または古い場合は供給者に請求します。
リスクアセスメントでは16項目すべてを読むのですか?
実務では第2項(GHS分類)、第8項(ばく露限界と保護措置)、第9項(揮発性)、第3項(含有率)を中心に読みます。応急措置や火災時の措置は、SDSを作業場に備え付けて、いざというときに参照できるようにしておきます。
2024年からSDSの何が変わりましたか?
交付義務の対象物質が段階的に拡大し、2024年4月に674物質から896物質になりました。記載項目に「想定される用途及び当該用途における使用上の注意」が追加され、「人体に及ぼす作用」は5年以内ごとに1回確認し、変更があれば1年以内に更新することが求められます。
SDSの第8項の数値が古い規則の管理濃度でした。濃度基準値はどう調べますか?
SDSの版によっては管理濃度や許容濃度のみの記載があります。濃度基準値は厚生労働大臣の告示が原典です。物質名で告示の一覧を確認し、八時間・短時間それぞれの値をSDSの記載と合わせて押さえます。
VOC空気清浄機事業部 セールスエンジニア。有機溶剤・VOC対策の技術担当として、装置の選定から労働基準監督署への対応まで、現場ごとの相談に応じています。
お問い合わせ:y.otaki@belica.co.jp