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解説 · 約7分

有機溶剤の管理濃度一覧|作業環境測定の評価と濃度基準値との違い

監修:大滝良彦(VOC空気清浄機事業部 セールスエンジニア) 公開

局所排気装置の全体図。フード、主ダクト、空気清浄装置、ファン、屋外の排気口の位置関係を示した断面イラスト
作業環境測定の値が管理濃度を超えて第三管理区分になったら、発生源対策から見直します。

管理濃度とは、作業環境測定の結果を第一〜第三管理区分に分けるために使う評価指標です。厚生労働大臣の告示「作業環境評価基準」で定められ、有機溶剤ではトルエン20ppm、キシレン50ppm、アセトン500ppmのように物質ごとに値が決まっています。作業場の空気中の濃度がこの値を超えると、対策が必要になります。

この記事は揮発性有機化合物(VOC)・有機溶剤の種類と健康影響のうち、溶剤ごとに決まっている「どこまでなら許されるか」の数値を掘り下げたものです。管理濃度が分かれば、作業環境測定の結果が良いのか悪いのかを自分で読めるようになります。

目次
  1. 管理濃度とは(何を判定する数値か)
  2. 代表的な有機溶剤の管理濃度
  3. 測定結果との比べ方と、他の指標との違い
  4. 管理濃度を超えて第三管理区分になったら
  5. よくある質問

管理濃度とは(何を判定する数値か)

管理濃度は、個々の労働者の健康影響を直接示す値ではなく、作業環境の管理状態が良いか悪いかを判定するための行政的な指標です。作業環境測定士が測った作業場の空気中の濃度を、統計処理した評価値と管理濃度とを比べて、第一・第二・第三の管理区分を決めます。

値は厚生労働大臣の告示「作業環境評価基準」で定められています。有機溶剤では、有機則の対象となる約54物質に管理濃度が設定されており、随時見直されます。単位はほとんどが ppm(体積比)です。

根拠:厚生労働省「作業環境測定(安全衛生キーワード)」、「管理濃度と許容濃度等との比較表

代表的な有機溶剤の管理濃度

現場でよく使われる有機溶剤の管理濃度です。正確な値と対象物質の全体は、必ず最新の作業環境評価基準で確認してください(数値は改正されることがあります)。

溶剤管理濃度有機則の区分
トルエン20 ppm第2種
キシレン50 ppm第2種
酢酸エチル200 ppm第2種
酢酸ブチル150 ppm第2種
メチルエチルケトン(MEK)200 ppm第2種
アセトン500 ppm第2種
イソプロピルアルコール(IPA)200 ppm第2種
メタノール200 ppm第2種
1,1,1-トリクロルエタン200 ppm第2種
テトラヒドロフラン50 ppm第2種
N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)10 ppm第2種
二硫化炭素1 ppm第1種

値の出典:厚生労働省の告示および大阪大学 環境安全研究管理センター「有機溶剤とその管理濃度」。管理濃度の低い溶剤ほど、少量でも管理が難しくなります。

測定結果との比べ方と、他の指標との違い

作業環境測定では、単位作業場所を等間隔で測るA測定と、発生源の近くなど濃度が高くなりそうな場所・時間で測るB測定を行います。A測定は統計処理して第1評価値・第2評価値を出し、管理濃度と比べます。B測定は測定値をそのまま管理濃度と比べます。B測定が管理濃度を超えると、A測定の結果にかかわらず第三管理区分です。詳しい手順は有機溶剤の作業環境測定(対象作業・頻度・A測定B測定)にあります。

似た数値に「濃度基準値」と「許容濃度」があります。管理濃度が作業場の空気を評価する指標なのに対し、濃度基準値は労働者の呼吸域の濃度に対する上限、許容濃度は学会の勧告値です。3つの違いは濃度基準値とは?対象物質・確認測定・管理濃度との違いで表にまとめています。有機溶剤を扱う事業所は、管理濃度に基づく作業環境測定と、濃度基準値に基づくばく露管理の両方に対応することになります。

管理濃度を超えて第三管理区分になったら

評価の結果が第三管理区分だった場合、事業者は速やかに改善措置を講じ、再度測定して効果を確認する義務があります。対策は上位から検討します。代替 → 発生源の密閉化 → 工学的対策(局所排気装置・プッシュプル型換気装置)→ 作業管理 → 保護具です。第三管理区分になったときの対応の全体像は第三管理区分になったら(事業者がやるべき改善措置)で解説しています。

装置内部の空気の流れ。吸引口から活性炭フィルター、HEPAフィルターを通ってクリーンな空気が排気される流れの図
発生源のそばで吸引し、活性炭とHEPAフィルターで有機溶剤を吸着してから排気する仕組みです。

工学的対策として局所排気装置が必要になったものの、置くスペースがない、建物が賃貸でダクト工事ができない場合は、工事不要の発散防止抑制装置が選択肢です。当社(ベリクリーンエア)の装置は局所排気装置が設置できない現場の有機溶剤対策で、発散防止抑制措置の特例実施許可(大阪労働局天満署 令和4年度第1号)を取得しています。あるインクジェット印刷ドックのMEK対策では、稼働中に付近の濃度が400〜500ppm(MEKの管理濃度は200ppm)あったところ、装置の設置後に0ppmで安定した測定例があります(2024年7月)。当社の装置は有機則対策向けで、特化則の対象物質には対応していません。対策前後の濃度はデモ機貸出で自社の現場で測れます。

よくある質問

管理濃度と許容濃度は同じ数値ですか?

近いことは多いですが、同じとは限りません。管理濃度は厚生労働大臣の告示(作業環境評価基準)で定める行政指標で、作業環境測定の管理区分を決めるために使います。許容濃度は日本産業衛生学会の勧告値で、法的な強制力はありません。

管理濃度が設定されていない有機溶剤はどう評価しますか?

作業環境評価基準に管理濃度がない物質は、日本産業衛生学会の許容濃度、またはACGIHのTLVを参考値として評価します。自律的管理の枠組みでは、濃度基準値が定められている物質はその値を基準にばく露管理を行います。

第2種有機溶剤とは何ですか?

有機則で有機溶剤を有害性と揮発性で3つに分けたうちの2番目の区分です。現場で使われる溶剤の大半が第2種で、表示は黄色です。区分の詳細は「有機溶剤の第1種・第2種・第3種の違い」で解説しています。

B測定の値が管理濃度を超えていたら第三管理区分ですか?

B測定の測定値が管理濃度を超えると、A測定の結果にかかわらず第三管理区分になります。B測定は、労働者のばく露が最も高くなると考えられる時間・場所で測る補完的な測定です。

混合溶剤の場合はどう評価しますか?

成分ごとの測定値を、それぞれの管理濃度で割った値を合計し、その合計が1を超えるかどうかで評価します(相加式)。1つでも管理濃度を超えていなくても、合計で超えれば対策が必要です。

監修:大滝良彦

VOC空気清浄機事業部 セールスエンジニア。有機溶剤・VOC対策の技術担当として、装置の選定から労働基準監督署への対応まで、現場ごとの相談に応じています。

お問い合わせ:y.otaki@belica.co.jp

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