ブログ / VOC・有機溶剤
解説 · 約10分有機溶剤とは(種類・危険性・事業者の義務)
監修:大滝良彦(VOC空気清浄機事業部 セールスエンジニア) 公開

有機溶剤とは、常温で液体で揮発しやすい有機化合物の総称です。他の物質を溶かす性質があり、塗装・洗浄・接着・印刷などで溶剤や希釈剤として広く使われます。蒸気を吸い込むと中毒などの健康障害を起こすため、有機溶剤中毒予防規則(有機則)で44種類が第1種〜第3種に分類され、扱う作業では局所排気装置・作業環境測定・特殊健康診断などが義務づけられています。
当社(ベリクリーンエア)は、局所排気装置の代わりに置ける「発散防止抑制措置」の装置を2021年から販売し、累計160台以上を納入してきました。2023年に大阪労働局天満署の特例実施許可を取得。2024年7月には、福井県の塗装作業場で当社のBA400Tが敦賀労働基準監督署に局所排気装置として認められた実績もあります。
有機溶剤の5つの種類
有機溶剤は化学構造でおおむね次の5つに分けられます。現場で使う溶剤がどれかによって、においや危険性、適した対策が変わります。
| 分類 | 代表例 | 主な用途 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 炭化水素系 | トルエン、キシレン、ヘキサン | 塗料・インキの溶剤、ゴム糊 | 引火性が高く、蒸気を吸うと中枢神経に影響 |
| アルコール系 | メタノール、エタノール、IPA | 洗浄、印刷、消毒 | メタノールは失明のおそれ。多量保管は消防法の対象 |
| ケトン系 | アセトン、メチルエチルケトン(MEK) | 樹脂・接着剤の溶解、脱脂、印刷 | 揮発が速く引火しやすい。皮膚から吸収されるものも |
| エステル系 | 酢酸エチル、フタル酸エステル | 塗料、接着剤、可塑剤 | 果実のような強いにおい。換気と保護具が必要 |
| エーテル系 | ジエチルエーテル | 抽出、麻酔(歴史的用途) | 空気と反応して爆発性の過酸化物を生じやすい |
分類は一般的な整理です。個々の物質の危険性は必ずSDS(安全データシート)で確認してください。
有機溶剤とは(性質と用途)
有機溶剤とは、他の物質を溶かす性質を持つ有機化合物です。塗料、インキ、接着剤、洗浄剤などに含まれ、製造業の多くの工程で欠かせない存在です。共通する特徴は、常温で液体で、揮発しやすい(蒸発して気体になりやすい)ことです。
気体になった溶剤は呼吸を通じて、また皮膚からも体内に吸収されます。気づかないうちに健康を損なう場合があるため、換気や保護具といった適切な管理が不可欠です。
有機則と特化則での分類
有機溶剤の安全管理には「有機則」と「特化則」の2つの省令が関わり、有害性に応じた区分がなされています。
- 有機溶剤中毒予防規則(有機則):指定された44種類の有機溶剤を第1種〜第3種に分類。リスクの高い第1種・第2種には局所排気装置などの設置が義務づけられます。(e-Gov 有機溶剤中毒予防規則)
- 特定化学物質障害予防規則(特化則):がんなど重篤な健康被害を招くリスクが特に高い物質を規制。「特別有機溶剤」に指定された12種類は、有機則の作業環境測定などに加えて特化則の管理が適用されます。(e-Gov 特定化学物質障害予防規則)
事業者は、扱う物質がどちらの規則に該当するかを正確に把握し、法令に沿った対策を講じる必要があります。
危険性と健康障害
有機溶剤による健康障害は、大きく「急性中毒」と「慢性中毒」に分かれます。
急性中毒
一時的に高濃度の蒸気を吸い込んで起こります。頭痛、めまい、吐き気などの症状が出て、判断力が低下します。最悪の場合は呼吸停止で死に至る危険があります。
慢性中毒
低濃度の蒸気に長期間さらされて起こります。初めは皮膚炎などの軽い症状ですが、進行すると肝臓や腎臓の障害、神経障害、造血器障害など深刻な状態になるおそれがあります。目に見えないリスクへの継続的な対策が必要です。
事業者の法的義務
第1種・第2種の有機溶剤を扱う屋内作業では、次のような措置が求められます。
- 有機溶剤作業主任者の選任:技能講習を修了した人を選任し、作業方法の決定、局所排気装置の点検、保護具の使用状況の監督などを行わせます。
- 作業環境測定:空気中のガス濃度を6ヶ月以内ごとに1回測定し、結果を3年間保存します。測定結果は第一〜第三管理区分に区分され、第三管理区分では速やかな改善が必要です。
- 有機溶剤等健康診断(特殊健康診断):6ヶ月以内ごとに1回、尿中代謝物や肝機能などを検査します。結果は5年間保存します。
- 保護具の使用:換気設備だけで防ぎきれない場合や短時間の臨時作業、タンク内作業などでは、対象の溶剤に対応した吸収缶付きの防毒マスクや送気マスクを使います。
- 掲示・表示・保管:区分の表示、取扱い上の注意の掲示、密栓しての保管などを行います。
有機溶剤蒸気の対策
有害な蒸気の吸入を防ぐには、発生源で直接処理するのが基本です。法令では、リスクに応じて主に次の3つの設備が求められます。
- 局所排気装置:発生源のそばで有害物質を吸引し、屋外へ排出する装置。
- プッシュプル型換気装置:気流を送り出し(プッシュ)、反対側で吸い込む(プル)方式。
- 全体換気装置:第3種有機溶剤のみで使用できる、部屋全体の空気を入れ替える装置。
局所排気装置などは大規模なダクト工事が必要です。工事ができない現場で使えるのが、ダクト工事の不要な「発散防止抑制措置」の装置です。当社の装置は有機則対策向けで、特化則(特定化学物質)に該当する物質には対応していません。詳しくは局所排気装置が設置できない現場の有機溶剤対策をご覧ください。
現場で見てきたこと
当社は、局所排気装置の設置が難しい現場での有機則対策を専門にしています。担当の大滝が現場で確かめたことを実例で紹介します(社名は伏せています)。
福井県の塗装作業場(エチルベンゼンの手塗り):以前から局所排気装置の設置を求められていた現場です。BA400Tを発生源から約5cmに設置し、排気を屋外へ出す改造を行いました。2024年7月16日、敦賀労働基準監督署の立ち会いで、捕集風速0.7m/s・屋外排気口での測定・フィルター管理計画が認められ、BA400Tが局所排気装置として承認されました。

MEKを使うインクジェット印刷:発生源付近が400〜500ppmという環境で、BA500Tを最大の約60%の風量で運転し、投入口・排気口とも0ppmを維持できた試験結果があります。納入は累計160台以上、フィルター交換の目安は平均6か月です。
これらは有機則対策・作業環境改善の事例です。特化則の管理基準を満たすことを示すものではありません。
よくある質問
有機溶剤とは具体的に何ですか?
常温で液体で、揮発しやすい有機化合物の総称です。他の物質を溶かす性質があり、塗装・洗浄・接着・印刷などで溶剤や希釈剤として使われます。トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、イソプロピルアルコール(IPA)などが代表例です。
シンナーは有機溶剤ですか?
はい。シンナーはトルエンや酢酸エチル、アルコール類などの有機溶剤を、塗料を薄める目的で混合した液体です。蒸気を吸い込むと中毒症状を起こすことがあるため、換気と保護具の着用が必要です。
有機則と特化則の違いは何ですか?
有機則は指定された44種類の有機溶剤を第1種〜第3種に分類して規制します。特化則は、がんなど重篤な健康被害を招くリスクが特に高い物質を規制し、有機則より重い管理(専用の洗浄設備、長期の記録保存など)を求めます。「特別有機溶剤」に指定された物質は、有機則の作業環境測定に加えて特化則の管理が適用されます。
有機溶剤を扱うときに必要な設備は?
第1種・第2種の有機溶剤を扱う屋内作業では、局所排気装置、プッシュプル型換気装置、または全体換気装置の設置が必要です。局所排気装置が設置できない場合は、要件を満たせば発散防止抑制措置の装置を代わりに使える場合があります。
有機溶剤対策のご相談
対策したい溶剤が決まっている、局所排気装置を置くスペースがない、ライン変更で動かせる装置がほしい ― そんなときは、工事不要で発生源の近くに置ける当社の脱臭・集塵装置をご検討ください。有機則対策と作業環境の改善に、累計160台の実績があります。

VOC空気清浄機事業部 セールスエンジニア。有機溶剤・VOC対策の技術担当として、装置の選定から労働基準監督署への対応まで、現場ごとの相談に応じています。
お問い合わせ:y.otaki@belica.co.jp