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解説 · 約7分

濃度基準値とは?対象物質・確認測定・管理濃度との違い

監修:大滝良彦(VOC空気清浄機事業部 セールスエンジニア) 公開

局所排気装置の全体図。フード、主ダクト、空気清浄装置、ファン、屋外の排気口の位置関係を示した断面イラスト
ばく露が濃度基準値を超えそうなときは、局所排気装置などの工学的対策から検討します。

濃度基準値とは、労働者が吸い込む空気(呼吸域)中の化学物質濃度の上限として、厚生労働大臣が定める値です。労働安全衛生規則 第577条の2にもとづき、2025年時点で179物質に設定されており、有機溶剤の多くが含まれます。事業者には、ばく露をこの値以下に抑える義務があります。

この記事は化学物質の自律的管理とリスクアセスメント義務化のうち、ばく露管理の物差しである「濃度基準値」を掘り下げたものです。有機溶剤を扱う事業所では、従来の作業環境測定に加えてこの基準への対応が必要になり、対策としてダクト工事のいらない発散防止抑制装置を選ぶケースが増えています。

目次
  1. 濃度基準値とは(2つの種類)
  2. 対象物質と一覧の調べ方
  3. 管理濃度・許容濃度との違い
  4. 確認測定が必要な場面
  5. 基準値を超えそうなときの対策
  6. よくある質問

濃度基準値とは(2つの種類)

濃度基準値は、労働者が1日8時間・週40時間程度ばく露しても、ほとんどの労働者に健康障害が生じないと考えられる濃度です。2022年5月の省令改正で導入された「化学物質の自律的な管理」の中心となる数値で、事業者はばく露をこの値以下に抑えなければなりません。基準は2種類あります。

  1. 八時間濃度基準値:1日の労働時間のうち8時間のばく露濃度を、測定時間で加重平均した値に対する基準。長時間の慢性影響を防ぐためのものです。
  2. 短時間濃度基準値:濃度が最も高くなる15分間のばく露濃度を加重平均した値に対する基準。短時間でも高濃度を吸わせないためのものです。

物質によって、両方が定められているものと、片方だけのものがあります。判断の基準になるのは、作業場全体の平均ではなく、その作業をする労働者の呼吸域(口・鼻のまわり)の濃度です。

根拠:労働安全衛生規則 第577条の2、厚生労働省「化学物質による労働災害防止のための新たな規制

対象物質と一覧の調べ方

濃度基準値が設定された物質は、2024年4月に67物質、2025年4月にさらに112物質が追加され、2025年時点で合計179物質になっています。今後も順次追加される予定です。有機溶剤では、トルエン、キシレン、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、メタノールなど、現場でよく使われるものの多くが対象です。

自分の使う物質と数値は、SDS(安全データシート)と、厚生労働大臣の告示で確認します。SDSには濃度基準値やばく露限界値が記載されており、告示の一覧が原典です。物質名で検索し、八時間・短時間それぞれの値と単位(ppm または mg/m³)をメモしておくと、後のリスクアセスメントが速く進みます。

有機則・特化則の対象物質は、濃度基準値とは別に「管理濃度」も定められています。数値が近い場合もありますが、目的も測り方も違うため、両方を押さえておく必要があります。次の章で整理します。

管理濃度・許容濃度との違い

現場では「濃度基準値」「管理濃度」「許容濃度」という似た言葉が並びます。どれも空気中の化学物質濃度の目安ですが、目的と使う場面が異なります。

名称測る対象目的・使う場面法的な位置づけ
濃度基準値労働者の呼吸域の濃度自律的管理。ばく露をこの値以下に抑える。超えるおそれがあれば確認測定安衛則577条の2。全リスクアセスメント対象物質が対象
管理濃度作業場の空気の濃度作業環境測定の結果を第一〜第三管理区分に分ける行政的な指標作業環境評価基準。有機則・特化則の対象物質は作業環境測定が義務
許容濃度労働者のばく露濃度健康影響の観点からの勧告値。リスクアセスメントの参考に使う日本産業衛生学会の勧告。法的な強制力はない

大事なのは、有機溶剤を扱う事業所では管理濃度と濃度基準値の両方に対応することになる点です。6か月以内ごとの作業環境測定(管理濃度)はこれまでどおり続き、そのうえで自律的管理としてばく露を濃度基準値以下に保つ責任が加わります。

確認測定が必要な場面

確認測定は、リスクアセスメントの結果、屋内作業で労働者のばく露が濃度基準値を超えるおそれがあると把握した場合に行います。作業をする労働者の呼吸域で濃度を測り、八時間・短時間それぞれの基準値以下であることを確認します。

まずは厚生労働省の簡易ツールCREATE-SIMPLEなどでばく露を見積もり、基準値に近い・超えるという結果が出た作業を対象に実測します。進め方は化学物質のリスクアセスメントのやり方(有機溶剤の場合)で解説しています。作業内容、取扱量、換気の状況が変わったときも、必要に応じて測り直します。

対策を入れたあとも確認測定は重要です。装置を設置しても、吸引口の位置や風量が合っていなければ狙った効果は出ません。導入前後で同じ条件で測り、実際に下がったことを数値で押さえておくと、監督署への説明にも使えます。

基準値を超えそうなときの対策

見積もったばく露が濃度基準値を超える、または近い場合、次の順で対策を検討します。上位ほど根本的で、効果が安定します。

  1. 代替:有害性の低い溶剤、低揮発性の材料、水性材料への変更。
  2. 発生源の密閉化・自動化:密閉容器、自動塗布、囲い込み。
  3. 工学的対策:局所排気装置、プッシュプル型換気装置。設置できない現場では発散防止抑制装置。
  4. 作業管理:作業手順の見直し、取扱量・従事人数・作業時間の削減。
  5. 保護具:有機ガス用防毒マスクなど。上位の対策で下げきれない残りを補う最後の手段です。

工学的対策として局所排気装置が必要になったものの、置くスペースがない、建物が賃貸でダクト工事ができない場合は、工事不要の発散防止抑制装置が選択肢になります。当社(ベリクリーンエア)の装置は局所排気装置が設置できない現場の有機溶剤対策で、発散防止抑制措置の特例実施許可(大阪労働局天満署 令和4年度第1号)を取得しています。累計160台の導入実績があり、あるインクジェット印刷ドックのMEK対策では、付近の濃度400〜500ppmが装置の設置後に0ppmで安定した測定例があります(2024年7月)。対策前後の濃度はデモ機貸出で自社の現場で測れます。当社の装置は有機則対策向けで、特化則の対象物質には対応していません。

よくある質問

濃度基準値と管理濃度は何が違いますか?

濃度基準値は労働者が吸い込む空気(呼吸域)の濃度の上限で、自律的管理の枠組みで使います。管理濃度は作業場の空気の濃度で、作業環境測定の結果を第一〜第三管理区分に分けるための行政的な指標です。有機則・特化則の対象物質は、管理濃度に基づく作業環境測定が引き続き義務として残ります。

確認測定はどんなときに必要ですか?

リスクアセスメントの結果、屋内作業で労働者のばく露が濃度基準値を超えるおそれがあると把握した場合に、呼吸域の濃度を測定して基準値以下であることを確認します。作業内容や取扱量が変わったときも、必要に応じて実施します。

八時間濃度基準値と短時間濃度基準値の違いは?

八時間濃度基準値は、1日8時間のばく露を時間加重平均した値に対する基準です。短時間濃度基準値は、濃度が最も高くなる15分間の平均に対する基準で、短時間に高濃度を吸わないための上限です。物質によって両方が定められているものと、片方だけのものがあります。

有機溶剤にも濃度基準値はありますか?

多くの有機溶剤に設定されています。トルエン、キシレン、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、メタノールなどが対象です。有機則の対象物質は、従来どおりの作業環境測定(管理濃度)に加えて、濃度基準値に基づくばく露管理も求められます。

濃度基準値を超えていたらどうすればよいですか?

工学的対策を優先します。代替物質への変更、発生源の密閉化、局所排気装置やプッシュプル型換気装置、設置できない現場では発散防止抑制装置です。作業管理と保護具は、それでも下げきれない残りを補う位置づけです。対策後に再度、確認測定で効果を検証します。

監修:大滝良彦

VOC空気清浄機事業部 セールスエンジニア。有機溶剤・VOC対策の技術担当として、装置の選定から労働基準監督署への対応まで、現場ごとの相談に応じています。

お問い合わせ:y.otaki@belica.co.jp

関連ページ

  1. 化学物質の自律的管理とリスクアセスメント義務化
  2. 化学物質のリスクアセスメントのやり方(有機溶剤の場合)
  3. 作業環境測定と管理区分(第一・第二・第三の意味)
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