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解説 · 約9分

化管法(PRTR制度・SDS制度)とは|対象物質と有機溶剤の届出

監修:大滝良彦(VOC空気清浄機事業部 セールスエンジニア) 公開

発生源で有機溶剤蒸気を捕集し、活性炭で処理してから排気する装置構成の断面イラスト
PRTRで届け出る「大気への排出量」は、発生源で捕集すれば下げられます。

化管法は、事業者が扱う化学物質の排出量を国に届け出て、自主的な管理を進めるための法律です。正式名称は「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」、通称PRTR法。中身は2つの制度です。PRTR制度は、対象物質をどれだけ環境に出したか・外へ運び出したかを毎年届け出るもの。SDS制度は、対象物質を他の事業者に渡すときに安全データシート(SDS)を交付するものです。対象は第一種指定化学物質515物質と第二種指定化学物質134物質で、トルエン・キシレン・酢酸エチルなど多くの有機溶剤が含まれます。

化管法は経済産業省と環境省が所管する法律で、厚生労働省の有機則化学物質の自律的管理とは別のしくみです。ただし、扱う溶剤が同じなら対応する担当者も同じになりがちです。この記事では、有機溶剤を扱う事業所の目線で、化管法の全体像とやることを整理します。

目次
  1. 化管法とは(2つの制度)
  2. 対象物質(第一種・第二種・特定第一種)
  3. PRTR制度:届出の対象事業者と手続き
  4. SDS制度:交付義務とラベル表示
  5. 有機則・化学物質管理者との関係
  6. 有機溶剤を扱う事業所がやること
  7. よくある質問

化管法とは(2つの制度)

化管法の目的は、事業者が自分の使う化学物質の量と行方を把握し、自主的に管理を改善すること、そして環境への支障を未然に防ぐことです。行政が濃度や量を直接規制するのではなく、「見える化」で事業者の判断を促すタイプの法律です。2つの制度でできています。

  1. PRTR制度:対象物質を1年間にどれだけ大気・水・土壌へ排出したか、廃棄物などとして事業所の外へ移動させたかを把握し、国へ届け出ます。国は集計して公表します。
  2. SDS制度:対象物質やそれを含む製品を他の事業者に渡すとき、その性状・取扱い・危険有害性を書いた安全データシート(SDS)を事前に交付し、容器・包装にラベルを表示します。

根拠:経済産業省「化管法(PRTR制度・SDS制度)」、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律

対象物質(第一種・第二種・特定第一種)

対象物質は、人の健康や動植物への有害性があり、環境中に広く存在すると考えられる物質です。令和3年の政令改正で見直され、令和5年4月から次の数になっています。

区分物質数PRTR届出SDS交付有機溶剤の例
第一種指定化学物質515物質対象(年1トン以上)対象トルエン、キシレン、エチルベンゼン、酢酸エチル
特定第一種指定化学物質23物質(第一種の一部)対象(年0.5トン以上)対象発がん性などが特に強い物質
第二種指定化学物質134物質対象外対象製造・輸入量が今後増える可能性のある物質

自社の溶剤がどれに当たるかは、SDSの第15項(適用法令)と、製品評価技術基盤機構(NITE)の対象物質リストで確認できます。PRTRとSDSで対象の範囲が違う点に注意してください。

根拠:製品評価技術基盤機構(NITE)「化管法 法律条文、関連資料」、経済産業省「化管法SDS制度 対象化学物質

PRTR制度:届出の対象事業者と手続き

PRTRの届出義務がかかるのは、次の3つをすべて満たす事業者です。1つでも外れれば届出は不要です(SDSの義務は別途残ります)。

  1. 業種:政令で定める24業種のいずれか。製造業、金属鉱業、電気業、ガス業、燃料小売業、洗濯業、自動車整備業などが含まれ、1つでも該当すれば対象です。
  2. 従業員数:本社・支社・営業所をすべて合わせて、常時使用する従業員が21人以上。
  3. 取扱量:ある事業所で第一種指定化学物質を年1トン以上(特定第一種は0.5トン以上)取り扱う、または特別要件施設がある。

対象になると、毎年度、前年度1年間の排出量・移動量を把握し、都道府県を経由して国へ届け出ます。届出は電子申請(PRTR届出システム)が基本です。令和5年度は全国32,502事業所が届け出ました。

根拠:経済産業省「PRTR制度 対象事業者」、環境省「令和5年度PRTRデータの概要等について

SDS制度:交付義務とラベル表示

SDS制度は従業員数や業種の条件がなく、対象物質を扱ってそれを他の事業者に渡すなら発生します。

  1. SDSの交付:第一種・第二種指定化学物質、またはそれらを含む製品を他の事業者に譲渡・提供するとき、その前にSDSを渡します。
  2. ラベル表示:容器や包装に、名称・成分・注意喚起語・絵表示などをラベルで示します。
  3. 更新:内容に変更があったら速やかに直し、取引先へ提供し直します。
  4. 対象は事業者間だけ:一般消費者向けの製品はSDS交付の対象外です。

安衛法にもSDSの交付義務があり、化管法とは対象物質の範囲が一部違います。ただし記載する16項目の様式はJIS Z 7253で共通です。SDSの読み方はSDS(安全データシート)の見方にまとめています。

有機則・化学物質管理者との関係

有機溶剤を扱う事業所は、化管法だけでなく厚生労働省の労働安全衛生関係の規制も同時にかかります。3つを混同しないよう、狙いと対象物質で整理します。

法令所管主に求めること対象物質
化管法(PRTR・SDS)経済産業省・環境省環境への排出量の届出、SDSの交付第一種515・第二種134
有機則厚生労働省作業環境測定、局所排気、特殊健診など労働者の保護有機溶剤54物質
自律的管理(安衛法)厚生労働省リスクアセスメント、ばく露を濃度基準値以下にリスクアセスメント対象物 約900

化管法は「環境へどれだけ出ているか」、有機則と自律的管理は「働く人がどれだけ吸うか」を見ています。同じトルエンでも、片方は大気への排出量、もう片方は呼吸域の濃度、と測る場所が違います。

有機溶剤を扱う事業所がやること

使う溶剤が化管法の対象なら、次の順で進めます。

  1. 対象か調べる:SDSの第15項とNITEの一覧で、第一種か第二種かを確認します。
  2. 届出要件に当たるか確認:24業種・従業員21人・年1トン(特定第一種は0.5トン)の3点をチェックします。
  3. 排出量・移動量を把握するしくみをつくる:購入量から製品への残存・回収・分解を差し引く、といった算出方法を業種別マニュアルから選びます。
  4. 排出量を減らす:これはそのまま労働環境の改善と重なります。発生源で捕集し、活性炭で吸着すれば、大気への排出を下げられます。
装置内部の空気の流れ。吸引口から活性炭フィルター、HEPAフィルターを通ってクリーンな空気が排気される流れの図

トルエン、キシレン、酢酸エチルなど第一種指定化学物質の多くは、活性炭で吸着できます。局所排気装置を置くスペースがない、賃貸でダクト工事ができない現場では、工事不要の発散防止抑制装置が選択肢になります。当社(ベリクリーンエア)の装置は局所排気装置が設置できない現場の有機溶剤対策で、発散防止抑制措置の特例実施許可(大阪労働局天満署 令和4年度第1号)を取得しています。累計160台の導入実績があり、あるインクジェット印刷ドックのMEK対策では、付近の濃度400〜500ppmが装置の設置後に0ppmで安定した測定例があります(2024年7月)。排気側で処理する業務用の脱臭・集塵装置もあります。発生源で捕集すれば大気への排出量は下がりますが、使用済み活性炭は廃棄なら移動量、再生なら扱いが変わるため、届出の数字は算出マニュアルで確認してください。当社の装置は有機則対策向けで、特化則の対象物質には対応していません。

よくある質問

化管法とPRTR法は違う法律ですか?

同じ法律です。正式名称は「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」で、化管法はその略称、PRTR法・PRTR制度も通称として使われます。中身はPRTR制度とSDS制度の2つです。

従業員が20人以下ならPRTRの届出は不要ですか?

本社・支社・営業所をすべて合算して常時21人未満なら、PRTR届出の対象外です。ただしSDSの交付義務は従業員数に関係なくかかります。対象物質を他の事業者に渡すなら、規模にかかわらずSDSが必要です。

有機則の対象物質とPRTRの対象物質は同じですか?

重なりますが別物です。トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどは両方に入っています。有機則の対象は54物質、化管法のPRTR(第一種指定化学物質)は515物質です。使う溶剤ごとに、SDSでどちらの対象かを確認してください。

SDSは労働安全衛生法にもありますよね?

化管法と安衛法の両方にSDSの交付義務があります。対象物質の範囲は一部違いますが、記載様式はJIS Z 7253で共通化されています。どちらか片方だけ対応して終わり、とはなりません。両方の対象物質リストで確認します。

排出量はどうやって計算しますか?

購入量から、製品に残る量・回収した量・分解処理した量などを差し引いて求めるのが基本です。環境省と経済産業省が業種別の「PRTR排出量等算出マニュアル」を出しているので、自社の工程に近い方法を選びます。

装置で大気への排出量を減らせますか?

発生源で溶剤蒸気を捕集して活性炭に吸着させれば、大気へ出ていく量は下がります。吸着した溶剤を含む使用済み活性炭は、廃棄すれば移動量、再生すれば扱いが変わります。届出の数字は算出マニュアルに沿って計算してください。

監修:大滝良彦

VOC空気清浄機事業部 セールスエンジニア。有機溶剤・VOC対策の技術担当として、装置の選定から労働基準監督署や自治体への対応まで、現場ごとの相談に応じています。化管法の届出そのものは行政書士や環境コンサルの領域ですが、排出量を下げる工学的対策の部分はお手伝いできます。

お問い合わせ:y.otaki@belica.co.jp

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