ブログ / 局所排気装置
解説 · 約8分実験室の局所排気装置(ドラフトチャンバー)とは
監修:大滝良彦(VOC空気清浄機事業部 セールスエンジニア) 公開

実験室の局所排気装置とは、有機溶剤や化学薬品、粉じんなどの有害物質を、作業口の内側で吸い込んで屋外へ排出し、研究者が吸い込まないようにする設備です。実験室で使う囲い式フードのタイプを「ドラフトチャンバー」または「ヒュームフード」と呼びます。有機則・特化則の対象作業がある実験室では、法令で設置が求められます。
当社(ベリクリーンエア)は、局所排気装置の代わりに置ける「発散防止抑制措置」の装置を2021年から販売し、累計160台以上を納入してきました。広島大学をはじめ、研究機関での導入実績もあります。2023年には大阪労働局天満署の特例実施許可を取得しています。
実験室の局所排気装置の種類
局所排気装置は、有害物質の捕集方法で主に次の3つに分かれます。
- 囲い式:作業空間そのものをフードで囲い込む方式。実験室のドラフトチャンバーがこれにあたります。より密閉性の高いグローブボックスも囲い式の仲間です。
- 外付け式:発生源の近くに吸引口を置き、周囲の空気ごと吸い込む方式。可動アームで発生源に近づけます。
- レシーバー式:発生源から出る熱の上昇気流や、機械が飛ばす粉じんの方向を利用して受け止める方式。

実験室で必要とされる理由
実験室では有機溶剤や化学薬品を少量ずつ、多品種にわたって扱います。微細な粉じんが出る作業もあります。ドラフトチャンバーが必要な理由は、大きく2つです。
研究者を有害物質から守る
有機則・特化則の対象物質を扱う場合、蒸気やガス、粉じんを吸い込むと急性中毒や慢性的な健康障害を起こすおそれがあります。ドラフトチャンバーは、発生した有害物質が呼吸域に届く前に吸い込みます。
外気の汚染を防ぐ
吸い込んだ空気をそのまま屋外へ出すと、大気汚染や近隣への臭気トラブルにつながります。局所排気装置はフードとファンの間に空気清浄装置を備え、有害物質を除去してから排気します。
関連法令:有機溶剤中毒予防規則、特定化学物質障害予防規則(e-Gov)
ドラフトチャンバーを選ぶポイント
カタログには多くの種類があります。安全に使うために確認したい3点です。
- 扱う薬品に耐える素材・仕様を選ぶ:酸を扱うなら耐酸性の素材、バーナーで加熱するなら排気量が変わりにくい定風量タイプ、というように、扱う内容に合わせます。素材選びを誤ると、装置がすぐに傷んでしまいます。
- 作業スペースに合う形を選ぶ:卓上型、据置型、大型の実験にはウォークイン型があります。エアコンの風が直接当たる場所、人の通行が多い場所は捕集性能が落ちるため設置に向きません。ダクトを通せない場合は、フィルターで処理するダクトレス(発散防止抑制措置)の選択肢もあります。
- 搬入経路を確保する:大型の家具ほどの装置は、建物のドア、階段の曲がり角、エレベーターに入らないことがあります。分解できないタイプは組み立て済みで運ぶため、事前のルート確認は必須です。
性能を落とさないための運用
ドラフトチャンバーは気流を制御して有害物質の流出を防ぐ装置です。そのため、エアコンの風、人の通行、扉の開閉といった「外乱」で捕集性能が大きく下がります。設置場所は選べないことも多いため、運用での対策が重要です。
- 使用中は近くの空調を調整する
- 作業者の背後を人が通らないようにする
- 不要なサッシの開閉を避け、開口部は必要最小限にする
- 1年以内ごとに1回の定期自主検査で制御風速を確認する
ダクト工事ができない場合
テナントビルの構造でダクトを通せない、賃貸の契約で壁に穴を開けられないなど、局所排気装置の設置が現実的に難しいケースがあります。この場合、一定の要件を満たして労働基準監督署の許可を得ると、屋外排気のない「発散防止抑制措置」の装置を代替として使える場合があります。
発散防止抑制措置の装置は、ダクトを使わず内蔵フィルターで有害物質を吸着し、処理した空気を室内へ循環させます。導入には、装置の性能や管理方法を説明し、労働基準監督署の許可を受ける必要があります。当社の装置は有機則対策向けで、特化則(特定化学物質)には対応していません。詳しくは発散防止抑制装置とは、局所排気装置が設置できない現場の有機溶剤対策をご覧ください。
現場で見てきたこと
当社は、局所排気装置の設置が難しい現場での有機則対策を専門にしています。担当の大滝が現場で確かめたことを実例で紹介します(社名は伏せています)。
福井県の塗装作業場(エチルベンゼンの手塗り):以前から局所排気装置の設置を求められていた現場です。BA400Tを発生源から約5cmに設置し、排気を屋外へ出す改造を行いました。2024年7月16日、敦賀労働基準監督署の立ち会いで、捕集風速0.7m/s・屋外排気口での測定・フィルター管理計画が認められ、BA400Tが局所排気装置として承認されました。

研究機関では、少量多品種の薬品を扱うため、扱う物質の見直しと機種選定が特に重要です。累計160台以上を納入し、フィルター交換の目安は平均6か月です。
これらは有機則対策・作業環境改善の事例です。特化則の管理基準を満たすことを示すものではありません。
よくある質問
実験室の局所排気装置はどこに設置されますか?
有機溶剤や化学薬品、微細な粉じんを扱う大学・企業の研究施設、学校の実験室などに設置されます。有機則・特化則の対象となる作業がある実験室では、法令上、設置が求められます。
ドラフトチャンバーの仕組みは?
作業口から室内の空気を吸い込み、内部を弱い陰圧に保つことで、有害物質を含む空気が作業者側へ漏れ出さないようにします。吸い込んだ空気はダクトを通り、空気清浄装置とファンを経て屋外へ排出します。
局所排気装置とドラフトチャンバーの違いは?
「局所排気装置」はシステム全体の総称で、そのうち実験室で使う囲い式フードのタイプが「ドラフトチャンバー(ヒュームフード)」です。局所排気装置には囲い式・外付け式・レシーバー式があり、ドラフトチャンバーは囲い式にあたります。
ダクト工事ができない実験室ではどうすればいいですか?
テナントビルで壁に穴を開けられない、屋外へダクトを通せないといった場合は、一定の要件を満たして労働基準監督署の許可を得れば、屋外排気のない「発散防止抑制措置」の装置を局所排気装置の代わりに使える場合があります。
実験室の有機溶剤対策のご相談
ドラフトチャンバーが置けない、ダクトを屋外へ通せない、扱う薬品が多くて機種を決めきれない ― そんなときは、工事不要で発生源の近くに置ける当社の脱臭・集塵装置をご検討ください。研究機関を含め、有機則対策と作業環境の改善に累計160台の実績があります。

VOC空気清浄機事業部 セールスエンジニア。装置の選定から労働基準監督署への対応まで、現場ごとの相談に応じています。
お問い合わせ:y.otaki@belica.co.jp