ブログ / VOC・有機溶剤

解説 · 約8分

有機溶剤の臭気対策(トルエン・キシレン・アセトン・MEK・IPA)

監修:大滝良彦(VOC空気清浄機事業部 セールスエンジニア) 公開

外付け式フードで有機溶剤の蒸気を発生源の近くから吸引する作業のイメージ
臭気対策の基本は、発生源の近くで吸引することです。消臭剤で隠しても蒸気は減りません。

トルエン、キシレン、アセトン、MEK、IPAは、いずれも独特の臭いを持つ有機溶剤で、塗装・印刷・接着・洗浄の現場でよく使われます。臭いを感じるのは、蒸気が空気中に一定濃度で存在しているサインです。対策の順番は、作業環境測定で現状を把握し、発生源の近くで吸引(局所排気・発散防止抑制装置)、換気の徹底、低揮発性の材料への変更、必要に応じて保護具、です。

この記事は揮発性有機化合物(VOC)・有機溶剤の種類と健康影響のうち、現場で使われる代表的な5つの溶剤の臭気対策を掘り下げたものです。当社(ベリクリーンエア)の「Belicleen Air」シリーズは、これらの有機溶剤を活性炭とHEPAフィルターで吸着する装置で、2021年から累計160台以上を納入しています。

目次
  1. 臭いと有害性は別物
  2. 対策の順番
  3. 溶剤ごとの特徴
  4. よくある質問

臭いと有害性は別物

有機溶剤の「臭いを感じ始める濃度(臭気閾値)」と、「健康に影響が出る濃度(管理濃度や許容濃度)」は、物質ごとに異なります。臭気閾値のほうが低い溶剤もあれば、逆の溶剤もあります。臭いがしないから安全、臭いがするから危険、と単純には言えません。

さらに、同じ職場で長く働くと臭いに慣れて感じにくくなります(順応)。「以前ほど臭わなくなった」は、濃度が下がったのではなく感覚が鈍っただけのことが多いです。安全の判断は、作業環境測定の結果で行います。

根拠:e-Gov 有機溶剤中毒予防規則

対策の順番

  1. 作業環境測定で現状を把握する:どの作業・どの位置で濃度が高いかを測ります。管理区分の考え方は作業環境測定と管理区分で解説しています。
  2. 発生源の近くで吸引する:局所排気装置が原則です。設置できない現場では、要件を満たせば発散防止抑制装置を代替に使えます。
  3. 換気を徹底する:給気と排気のバランスを整え、溶剤蒸気が滞留しない空気の流れをつくります。アセトンなど空気より重い蒸気は低い位置に溜まります。
  4. 材料・作業方法を見直す:低揮発性・低臭タイプの材料への変更、容器の密閉、拭き取り面積の縮小、作業後の速やかな片付け。
  5. 呼吸用保護具:上記でも改善しきれない場合の補助的な措置です。有機ガス用の防毒マスクを使い、装着を確認します。

消臭剤・芳香剤は、臭いを隠すだけで蒸気は減りません。対策としては使えません。

溶剤ごとの特徴

当社の装置が主に対応する5つの有機溶剤について、臭いの特徴と対策の要点をまとめます。いずれも第2種有機溶剤で、作業環境測定と有機溶剤健診の対象です。

  1. トルエンシンナー臭・接着剤臭。塗装、印刷、接着、洗浄で広く使われます。第2種有機溶剤で、作業環境測定と有機溶剤健診の対象です。中枢神経への影響があり、頭痛・めまい・倦怠感が出やすい溶剤です。
  2. キシレントルエンに似たシンナー臭。塗料・インクの溶剤、樹脂の希釈に使われます。第2種有機溶剤。トルエンと混合で使われることが多く、混合有機溶剤として換算評価します。
  3. アセトン除光液のような甘く刺激的な臭い。脱脂・洗浄、樹脂の溶解に使われます。第2種有機溶剤。揮発が非常に速く、少量でも臭いが立ちやすい一方、空気より重く低い位置に溜まりやすい性質があります。
  4. MEK(メチルエチルケトン)アセトンに似た刺激臭。インクジェット印刷、接着、塗装で使われます。第2種有機溶剤。印刷ドックなど発生源が集中する工程で局所的に高濃度になりやすい溶剤です。
  5. IPA(イソプロピルアルコール)消毒用アルコールに似た臭い。電子部品や精密機器の洗浄、拭き取りで使われます。第2種有機溶剤。拭き取り面積が広いと、作業台全体から揮発し続けます。

これらの溶剤の臭いと蒸気は、活性炭フィルターで吸着できます。当社の装置は有機則対策向けで、特化則(特定化学物質)に該当する物質には対応していません。局所排気装置が置けない現場の対策は局所排気装置が設置できない現場の有機溶剤対策、装置の詳細は業務用脱臭・集塵装置をご覧ください。導入前にデモ機で自社の作業場の濃度を測ることもできます。

よくある質問

臭いを感じなければ安全ですか?

いいえ。臭いを感じ始める濃度(臭気閾値)と、健康に影響が出る濃度は物質ごとに異なります。臭いに慣れて感じなくなっても濃度が下がったわけではありません。安全の判断は作業環境測定の結果で行います。

消臭剤や芳香剤で対策できますか?

できません。消臭剤や芳香剤は臭いを一時的に隠すだけで、有機溶剤の蒸気そのものは減りません。対策は発生源での吸引(局所排気・発散防止抑制装置)と換気が基本です。

活性炭で除去できるのはどの溶剤ですか?

トルエン、キシレン、アセトン、MEK、IPAなど、有機則の対象となる有機溶剤の多くは活性炭フィルターで吸着できます。ただし、吸着できる量には限りがあり、溶剤の種類と使用量で交換頻度が変わります。特化則の対象物質には対応していません。

どの対策から始めればいいですか?

まず作業環境測定で現状を把握します。第三管理区分なら、局所排気装置の設置・能力向上が原則です。設置場所がなければ発散防止抑制装置が選択肢になります。低揮発性の材料への変更も並行して検討します。

監修:大滝良彦

VOC空気清浄機事業部 セールスエンジニア。有機溶剤・VOC対策の技術担当として、装置の選定から労働基準監督署への対応まで、現場ごとの相談に応じています。

お問い合わせ:y.otaki@belica.co.jp

関連ページ

  1. 揮発性有機化合物(VOC)・有機溶剤の種類と健康影響
  2. シンナーの臭いを防ぐ5つの対策
  3. インクジェットプリンター(IJP)のMEK・有機溶剤対策
  4. ブログ一覧